緑茶(日本茶)は、日本人の生活の様々なシーンで、なくてはならない国民的飲み物です。緑茶の美味しさは分かっていても、美味しい緑茶の入れ方は、きちんと知らないという方も多いかもしれません。
ほんの少しのコツを知れば、いつでも手軽に美味しい緑茶をいただけるようになります。煎茶や玉露、ほうじ茶など種類別の入れ方とポイント、夏に欠かせない冷茶の入れ方などについて見ていきましょう。
煎茶の美味しい入れ方とポイント!バランスの取れた甘味と渋味を引き出そう
煎茶の美味しさのカギは、甘味と渋味の絶妙なバランス
煎茶は、日本で生産される緑茶の実に8割を占める、緑茶の代表選手とも言えるお茶です。
煎茶の美味しさの決め手は、甘味と渋味とのバランスですが、これらはそれぞれ茶葉に含まれる成分が元となっています。渋味の元はカテキンという物質で、甘味の元はテアニンというアミノ酸の一種が生み出しています。
このうち、カテキンの抽出量は、使われるお湯の温度によって大きく変わります。熱いお湯で入れるとカテキン(渋味)が多く含まれ、ぬるめのお湯で入れるとカテキンを抑えることができます。
一方テアニン(甘味)は、お湯の温度と関係なくほぼ一定量が抽出されるのですが、カテキンの量が増えると、渋味がせっかくの甘味を覆い隠してしまうため、渋味ばかりが目立つバランスの悪い味わいになってしまいます。
一般的に煎茶を入れるお湯の適温は80℃~90℃とされています。沸騰したお湯をすぐ急須に注ぐのではなく、少し冷ましてから入れると、甘味と渋味のどちらも感じられる煎茶となります。
では、これよりさらに10℃~20℃温度を下げたお湯で煎茶を入れてみるとどうなるでしょうか?
カテキンの抽出量はさらに少なくなり、渋味の陰に隠れていた甘味がより強く感じられる煎茶になります。煎茶は、高級緑茶である玉露ほどテアニンが含まれてはいませんが、いつもの煎茶とは思えない甘味に驚くと思います。
お湯の温度 | 低 | 高 |
---|---|---|
煎茶の味 | 甘味 | 渋味 |
このように、同じ煎茶の茶葉でも、お湯の温度や、お湯に茶葉をくぐらせる時間(間合い)を変えると、様々な味わいを作り出すことができるため、茶葉の等級に合わせた入れ方の基本を知っておくと、美味しく入れることができ便利です。
更に、冬の時期などは茶器をあらかじめ温めるなど、適温を保つ気遣いが加われば、緑茶上級者に一歩近づくことができます。
一番茶のみを使用した上級煎茶は、日光を長期間浴びていない若葉が原料であり、テアニン(甘味)が比較的多く含まれています。従って、入れ方は、沸騰したお湯を60℃~70℃くらいまで冷ましたものを使って入れ、1分半~2分の間合いを取って、じっくり甘味を抽出してから茶碗に注ぐと美味しくいただけます。
普通煎茶を入れる場合のお湯の適温は、80℃~90℃とされていますが、その茶葉には、日光を浴びることで増える渋味成分カテキンが多く含まれています。そこで、普通煎茶を美味しく入れるためには、急須にお湯を注ぎ始めてからお茶碗に注ぎ切るまでの間合いを、1分以内に収めることが大変重要になります。
深蒸し煎茶なら入れ方に神経質にならずに済む
深蒸し煎茶は、昭和30年代後半から40年代ごろ開発された煎茶の一種で、高温のお湯で入れても渋味が強くなりづらく、甘味もきちんと感じることができるため、入れ方に注意しなくても誰でも美味しく入れることができる緑茶として人気です。
深蒸し煎茶の製造工程の一番の特徴は、その熱処理です。煎茶(緑茶)の製造では、茶葉を摘み取ってすぐに高温の蒸気を当てる「蒸し」の工程が行われますが、通常30~60秒程度蒸すところを、深蒸し煎茶の茶葉は1~3分かけて蒸しています。
こうすることによって、渋味成分カテキンが減少します。深蒸し煎茶が、高温のお湯で入れても渋味が出にくいのはそのためです。また、間合いが多少長くなりすぎてしまっても、元々の渋味が少ないため、渋味に負けない甘味や旨味を味わうことができます。
深蒸し煎茶は、高温で長時間蒸気を当てることで、茶葉の繊維質が破壊され粉々になるため、普通の急須でそのまま入れるとお茶に細かい茶葉が混じってしまいます。
従って、金属製の茶こしを使って入れる必要があります。また、深蒸し煎茶専用の急須もありますので、そちらを使ってもOKです。
煎茶の美味しい入れ方
1. 新鮮な水道水を沸騰させる
新鮮な水道水を完全に沸騰させます。低い温度で入れる場合でも、必ず一度沸騰させてから冷まして使いましょう。
何度も沸騰させると、水に含まれていた空気が抜けてしまい、急須の中で茶葉が対流する力が弱くなり、茶味を十分に抽出できなくなるため、その都度新しい水を使います。
ポットのお湯を再沸騰させた場合は、一度蓋を開け、一呼吸おいてから使いましょう。これを「大息をぬく」と言います。(ポットの場合でも、できればポット内のお湯を捨てて、新しい水に入れ替えて沸騰させる方がベターです)
2. 茶器を温める(室温が高い日にも欠かさず行う)
急須、お茶碗、湯冷ましそれぞれにお湯を入れ、あらかじめ温めます。夏場であれば、まず急須にお湯を入れ、そのお湯をお茶碗に注ぐなど、お湯を使い回しても良いでしょう。
湯冷ましを使わず、お茶碗を使ってお湯を冷ましている方も、茶器を温めた後は一旦お湯を捨て、緑茶を入れるお湯は新しいものを使って下さい。
3. 茶葉を量って急須に入れる
茶葉を人数分量り、急須に入れます。一人あたり約3g(大さじ1杯)がおおよその目安ですが、抽出量によって微調整します。
4~5杯以上まとめて入れる場合は、一人あたりの分量を少なめに加減し、反対に1人分や2人分など少量のお茶を入れる場合は、少し多目に茶葉を入れるのがコツです。
4. 茶葉に合った温度に湯を冷ます
やかんやポットで水を沸騰させて、そのまま急須に注いでいるという方もいるかもしれませんが、この入れ方はNGです。美味しい煎茶を入れるためには、急須に入れる前の一手間が美味しさのカギとなります。
前述の通り、茶葉には美味しく入れるための適温があり、その温度まで冷ましてから使うステップを必ず行いましょう。(上級煎茶:60~70℃、普通煎茶:80~90℃)
まず、専用の湯冷ましか、注ぎやすい片口の器を用意します。そこに、上級煎茶であれば一人当たりおよそ50~60mL、普通煎茶であれば一人当たりおよそ80~90mLのお湯を人数分入れ、適温になるまで冷まします。
この際、一度お茶碗にお湯を入れてから湯冷ましに移せば、人数分のお湯を量ることができ、一石二鳥です。
お湯を冷ます目安ですが、沸騰したお湯を、茶碗や湯冷ましなど別の器に移すと、その都度10℃ずつ温度が下がります。また、湯冷ましに使う器は、磁器よりも土ものである陶器を選ぶと、より効率的にお湯の温度を下げることができます。
5. 急須に湯を注ぎ、間合いをとって茶碗に注ぐ
お湯が適温になったら、急須に注いで茶葉の成分を抽出します。茶葉の持つ甘味と渋味のバランスが取れたタイミングを見計らい、お茶碗に注ぎ分けますが、このタイミングのことを「間合い」と言い、美味しい煎茶を入れる上では欠かせない要素です。
一番茶のみを使用した上級煎茶には、甘味成分が多く含まれていますので、急須にお湯を注ぎ始めてから茶碗に注ぎ終わるまでの間合いは、1分半~2分くらい取るのが適当です。普通煎茶の場合は1分くらいです。
注いでいる間にも茶葉からの抽出は進むため、注ぎ回す時には並べたお茶碗に順番に少量ずつ注ぎ入れ、すべてのお茶の濃さが均等になるようにしましょう。
また、二煎目を美味しくいただくために、一煎目のお茶は最後まで注ぎ切ることが大切です。急須にお茶が残ったままだと、それにより茶葉が完全に開いてしまい、二煎目のお湯を注いでも味や香りが抽出できなくなるためです。
この、一煎目の最後の一滴は「黄金の一滴」と呼ばれ、味が凝縮され、最も美味しいともされています。
6. 二煎目の入れ方
二煎目と一煎目の茶葉の最大の違いは、水分を含んでいるか、含んでいないかです。一煎目で急須に注ぐお湯の量は、茶葉が吸収する分も計算されているため、二煎目ではお湯の量を一割ほど減らして準備しましょう。
また、茶葉に含まれる味と栄養分の約8割が一煎目で抽出されます。二煎目では色や香りの成分が中心となりますので、一煎目よりも温度の高いお湯で入れることで苦渋味をプラスしましょう。この際、間合いは短めにとり、渋くなりすぎないように調整するのがポイントです。
お湯を注いだら、急須の底を手のひらで支え、水平に回します。これは、一煎目で水気を含んだ茶葉が茶こし周辺に偏っているのをならすためで、煎茶の成分の抽出を助ける意味合いもあります。
玉露の美味しい入れ方とポイント!繊細な旨味と香りを引き出そう
独特の栽培方法の玉露は、渋味成分が少なく、甘味成分を多く含む
玉露は独特な方法で栽培することにより、特別な旨味と香りを持つ高級茶です。玉露の茶葉は、覆下茶園と呼ばれる専用の茶園で栽培されます。
茶摘みが始まる2週間ほど前になると、茶園に支柱を立て、よしず(葦で作られたすだれ)で全体を覆い、直射日光を遮断するのですが、これが玉露の繊細で濃厚な旨味を作り出しています。
普通、この時期の新芽は日光をふんだんに浴びて硬くなってきますが、よしずの下の新芽は柔らかいまま育ちます。また、わずかに差し込む日光を取り入れようとするため、葉は表面積を広げ一枚一枚が薄く大きくなります。
直射日光を遮ることで、葉に含まれる成分にも違いが現れます。茶葉には元々、甘味成分であるテアニンが含まれていますが、日光に当たるとそれが渋味成分のカテキンに変わります。直射日光に当てずに育てた玉露の葉には、テアニンが多く残り、カテキン含有量は少なくなるというわけです。
また、覆下茶園で栽培された玉露の葉には、独特の香りが生み出されます。青海苔にも例えられるこの香りを「覆い香」と呼び、緑茶に含まれる甘味と相まって、玉露ならではの美味しさの元になっています。
玉露の美味しい入れ方
玉露の入れ方は、煎茶の入れ方と基本的には同じですが、玉露ならではの注意点があります。
1. 玉露用の茶器を用意する
少量を味わう玉露を入れるための急須は、容量150mLほどの小ぶりのものです。専用の急須を使うと、茶葉の対流が十分に行われるなど、玉露の美味しさをしっかり引き出してくれるので、専用の急須を用意されることをオススメします。
2. 適温は人肌くらい、一人あたりのお湯の量はお猪口1杯程度
一度しっかり沸騰させたお湯を、湯冷ましや片口の器にとって冷ますのは、一般的な煎茶と同じですが、玉露の場合はその温度が重要で、人肌に近い40℃~45℃まで冷ましたお湯を使います。
甘味を存分に引き出すために、最初のうちは温度計を使いながら入れても良いでしょう。また、お湯の量は一人当たりおよそ20mLと非常に少量です。
低温のお湯で入れるのは、苦味成分カフェインの抽出量を抑えるためです。日光を遮断して茶葉を栽培すると甘味成分テアニンが増加しますが、同時にカフェインも増加するため、玉露は緑茶の中でもカフェイン含有量が特に多くなっています。
茶種 | カフェイン (%) |
カテキン類 (%) |
アミノ酸 (%) |
---|---|---|---|
玉露 | 4.04 | 10.04 | 5.36 |
煎茶(上級) 煎茶(中級) |
2.87 2.80 |
14.14 13.56 |
2.70 2.18 |
番茶 | 2.02 | 12.33 | 0.77 |
ほうじ茶 | 1.93 | 8.32 | 0.20 |
(出典:静岡県茶業会議所「新茶業全書」、前田・中川「各種緑茶の総合的理化学分析」)
カフェインは低温では抽出されにくいため、玉露の特徴である甘味(テアニン)を際立たせるためにも、人肌ぐらいの低温がベストなのです。
3. 茶葉の量は、煎茶よりも気持ち少なめに急須に入れる
煎茶の場合、一人あたり大さじ1杯の茶葉を急須に入れますが、玉露はそれよりもやや少なく、大さじで軽く1杯を目安とします。
4. 急須にお湯を注ぐ
いよいよ適温まで冷ましたお湯を急須に注ぎます。その際、茶葉に均等にお湯がかかるように注ぐ位置をずらしながら、静かに注いで下さい。茶葉がかぶるくらいが適量です。
5. 間合いは2分半~3分を目安に、最後まで注ぎ切る
玉露は、急須にお湯を注ぎ始めてから最後の一滴を注ぎ終えるまでの間合いは、2分半~3分くらいが適当とされています。それぞれのお茶碗に注ぎ分ける時間も見越して、少しずつ順番に注ぎ入れます。
すべてのお茶が同じ濃さになるように注ぎ、さらに黄金の一滴まで残さず注ぎ切ることができれば完璧です。
6. 二煎目の入れ方!玉露も二煎目が楽しめる
玉露の旨味や栄養分の8割方は一煎目のお茶に含まれていますが、玉露もぜひ二煎目も楽しみたい緑茶です。普通煎茶と同じく、1割ほど量を減らし、温度はやや高めのお湯を注いで、間合いも短めにします。
その際、急須の茶こしについている茶葉も落として、茶味を余すことなく抽出する一手間を忘れずに行ってください。
かぶせ茶は、簡単な入れ方で玉露風味を楽しめる
かぶせ茶は、玉露のような甘味成分を多く含みながら、普通の煎茶のように熱いお湯で入れることができるなど、簡単な入れ方で玉露風味を楽しめる緑茶です。玉露とは違って大量生産にも対応しています。
玉露のように入れ方に気を遣わず、熱湯でも美味しく入れられるため、特に関西地方では「熱湯玉露」と呼ばれ広く普及しています。
かぶせ茶を栽培しているのは、一般の煎茶と同じ畦仕立ての茶園ですが、茶摘みの1週間ほど前になると、寒冷紗や化学繊維などの薄手の布を覆いかぶせて、日光を軽く遮断するのが特徴です。
前述の通り、日光を遮断して栽培すると、苦味成分カフェインを多く含んだ茶葉になりますが、遮断期間が短いため玉露ほどカフェインを多く含みません。また、日光を遮断するため、玉露ほどではないですが普通の煎茶よりも、甘味成分テアニンを多く含んだ茶葉となります。
このようなことから、玉露の場合はカフェインを多く抽出させないように、低温で入れる必要がありますが、かぶせ茶の場合はカフェインを多く含んでいないため、温度調整に気を遣う必要は無いのです。
かぶせ茶の入れ方は、煎茶の入れ方と同じで以下の通りです。
・甘味を楽しみたい場合は、上級煎茶の入れ方「60℃~70℃のお湯で、1分半~2分の間合い」
・渋味・苦味を楽しみたい場合は、普通煎茶の入れ方「80℃~90℃のお湯で、1分程度の間合い」
番茶の美味しい入れ方とポイント!あっさりした味わいを楽しもう
番茶の特徴は、苦味や渋味の少ないあっさりした味わい
番茶は、普段使いされる緑茶の総称で、主に二番茶の晩摘みや三番茶以降の茶葉を原料としています。
摘み取る時期が遅いため、長い期間日光を浴びて育った茶葉には、渋味成分カテキンが多く含まれています。その一方で、苦味成分カフェインは日光に当たると減少する性質があり、番茶の茶葉にはカフェインはそれほど多く含まれていません。
晩摘みの茶葉は成長して硬くなっているため、摘み取った後に蒸気で加熱する蒸し工程を、普通の煎茶に比べてやや長めに行います。そのため、加熱によって変質しやすいカテキンが減少し、その結果番茶は、苦渋味の少ない、あっさりした味わいとなります。
また、価格も手頃であるため、飲むたびに新しい茶葉を使って一煎目のみをいただくことができ、香り高いお茶を楽しめるのも番茶の良さでしょう。
番茶の美味しい入れ方
1. 大きめの土瓶を用意する
番茶を美味しく入れるのに適した急須は、800mLくらい入る大ぶりの土瓶です。短時間であれば直火にかけられるため、茶葉を煎じて抽出する「煎茶法」のような入れ方も楽しめます。
土瓶は、ほうじ茶をいただくときにも重宝しますので、ぜひ手に入れたい茶器の1つです。なお、お湯が入っていれば土瓶は火にかけられますが、くれぐれも空焚きはしないように気をつけて下さい。
2. 茶葉の量を多めに急須に入れる
番茶の茶葉は、普通煎茶と比べて多めに使います。一人あたりおよそ4~5g、大さじでは山盛り一杯程度です。
3. 沸騰したお湯を急須に注ぐ
お湯の量は、一人あたりおよそ130mLが目安で、これを人数分沸騰させて、茶葉の上から土瓶に注ぎ入れます。ただし、人数が少ない場合でも、より美味しく入れるためには、少なくとも土瓶の半分くらいまで注ぎ入れ、茶葉を十分に対流させましょう。
4. 直火にかけて煎じる
ここで急須に蓋をして、とろ火にかけて1分ほど煮出します。土瓶の底が濡れていると、ひび割れなど事故の原因になりますので、よく水気を拭き取り、火にかけてからも吹きこぼれなどに注意が必要です。
なお、あっさりした番茶がお好みなら、煮出さずに、お湯を注いで30秒ほどの間合いをとって注ぎ分けましょう。
加工茶(ほうじ茶、玄米茶)の美味しい入れ方とポイント!香ばしい味と香りを堪能しよう
ほうじ茶は自分で作るのがオススメ!
ほうじ茶は、玄米茶などと同じ加工茶の一種で、緑茶を強火で炒った(焙じた)ものです。これにより「焙焼香」と呼ばれる香ばしい香りをまといます。
ほうじ茶は、番茶や二番茶以降の煎茶を原料とした市販品がお茶屋さんやスーパーの店頭で手に入りますが、封を開けた時の香ばしさが上手く保存しても程なく飛んでしまうのが難点です。
そこでオススメしたいのが、ご家庭で飲みきれなかった古くなった煎茶や玉露、番茶など様々なお茶をご家庭で炒り、自家製ほうじ茶として楽しむ方法です。
こうすることで、炒りたての香ばしさをいつでも味わうことができるとともに、古くなった茶葉も別の味わいとして復活します。もちろん新しい茶葉を使って炒ってもOKです。
自家製ほうじ茶の作り方と美味しい入れ方
1. 焙じ器を用意する
専用の「焙じ器」も売られていますが、ご家庭で茶葉を炒る場合には、小鍋やテフロン加工のフライパンを使って空炒りしても良いでしょう。
フライパンなど、専用の焙じ器以外を使う場合は、表面の油や汚れを良く拭き取ってから使用してください。
2. 茶葉を焙じる
ほうじ茶の茶葉の分量は、元の茶葉の種類に関係なく番茶を入れる時と同じ量で、一人あたり大さじ山盛り1杯が適量です。
人数分の茶葉を焙じ器や鍋に入れたら火にかけますが、茶葉が一気に焦げるのを防ぐため、手に持った焙じ器や鍋は、火にかざすようにして小刻みに振り、時々箸などでかき混ぜます。火の上で止めるのはNGです。そして好みの仕上がりになったら火から下ろします。
元の茶葉の水色や味を残しつつ、焙焼香のみ加えたい時は、香りが立ってきたらすぐ火を止めます。
それよりも香ばしさを加えたい時は、茶葉の色を見て、半分くらいが焦げ茶色になったら火を止めます。市販のほうじ茶くらい香ばしい仕上がりが良ければ、茶葉全体が焦げ茶色になるまで焙じます。
3. 沸騰したお湯で入れる
あらかじめ温めておいた急須や土瓶に、炒りたての茶葉を入れます。そこに、沸騰したお湯を番茶を入れる時と同じ一人あたりおよそ130mLを目安に、人数分注ぎます。
間合いは、焙じ加減によって変わってきます。茶葉に緑色が残っているぐらいなら30秒、焦げ茶色になっていれば1分程度です。長くても1分程度を目安としてください。
玄米茶は、炒ったお米の香ばしさが際立つブレンド茶
玄米茶は、蒸してから炒って水気を飛ばした玄米(or白米)と茶葉を1:1の割合でブレンドした加工茶です。茶葉は晩摘みの中級から下級の番茶の原料になるクラスのもので、下級茶特有のクセを炒った米の香気でカバーすることで、美味しくいただくことができます。
玄米茶のルーツは大正時代末期に遡ります。懐石料理のシメにいただく、おこげにお湯とお塩を加えた「湯の子(湯斗)」から発想を得て、香りが弱いお茶にご飯のおこげや炒った玄米、かき餅などを加えたのが始まりだと言われています。
現在では、炒ったお米、かき餅に加え、お茶の花を連想させるポップコーン(玄米をはじけさせたもの)を加えた玄米茶も登場しています。
このように玄米茶には様々なものがありますので、自分好みの玄米茶をご自身でブレンドしてみてはいかがでしょうか?
茶葉はご自宅にある飲み切れなかったものを使っても、好みの茶葉を使っても良いでしょう。加える米は、お釜の底にあるおこげやかき餅でもいいですし、お茶屋さんで炒り玄米のみを購入してもいいです。
玄米茶やほうじ茶といった加工茶は、作りたてが最も香り高く、美味しくいただけます。ぜひ自家製ブレンドの美味しさを経験していただきたいと思います。
玄米茶の美味しい入れ方
1. 茶葉と炒り米が1:1になるよう混ぜてから量る
玄米茶は、炒り米が混ざっている分、茶葉だけのお茶よりもかさが増しています。一人あたりおよそ5g、大さじで山盛り1杯を目安に急須に入れましょう。
玄米の香ばしさと茶葉の苦味をバランスよく味わうため、最初に全体をかき混ぜて、茶葉と玄米が等しく配置されるようにしましょう。
2. 熱湯を急須に注ぐ
玄米茶には、沸騰してすぐの熱湯を使います。できるだけ熱いお湯を使うのが、玄米茶の入れ方の最重要ポイントです。熱いお湯で入れることで、香ばしさが際立ちます。
注いだお湯の3割程度が茶葉に吸収されてしまうことを見越して、3人分では400mLくらい注ぎます。出来上がりは約280mLくらいになり、一人当たり100mL弱の玄米茶をいただけます。
なお、熱湯で入れるお茶なので間合いは短めに、お湯を入れて30秒ほど経ったら注ぎ分けましょう。
高級緑茶の出物「茎茶、芽茶、粉茶」の美味しい入れ方とポイント!リーズナブルな価格で高級緑茶を味わおう
茎の部分だけを集めた茎茶は、甘味と苦味が調和した独特の味わい
茎茶は、「出物」と呼ばれる緑茶の一種で、芽茶や粉茶も出物の一種です。出物とは、煎茶や玉露などの仕上げ工程で選り分けられた、茎や芽、葉の軸、茶葉を揉む際に粉々になった部分などの副産物のことです。
大きさや形が揃った葉だけを集めて商品化される「本茶」に対して、規格外のものを集めた廉価品が「出物」という訳です。元は高級茶葉のため、味わいや香りは優れているにもかかわらず、値段はリーズナブルです。
茎茶はその中でも茎の部分だけを集めて作られており、「棒茶」とも呼ばれています。茶葉を含まないその味わいは、苦味とともに甘味が感じられ独特ですが、さっぱりとして飲みやすく、高い人気を誇っています。
同じ出物でも、玉露の出物と煎茶の出物とでは味わいは大きく違うため、出物の中にもランクがあり、通に好まれるブランド出物茶もあります。茎茶の場合でも、玉露や碾茶の茎茶である「雁ヶ音」は、本茶の半値ほどで玉露の旨味がお手軽に味わえるとして高く支持されています。
玉露や煎茶の本茶は、二煎目もいただけますが、茎茶はぜひその都度茶葉を新しくして、高級茶の持つ旨味を楽しんでほしいと思います。
茎茶の美味しい入れ方
1. 本茶よりも多めに急須に茶葉を入れる
葉の部分と比べると、茎茶は茶味の抽出が弱いという特徴があります。したがって、本茶である煎茶や玉露よりも多めに使います。3人分でおよそ10~12g(大さじ山盛り2杯強)を基準に、好みの分量を見つけましょう。
2. 本茶よりも高温のお湯を急須に注ぐ
玉露の本茶を入れる適温は40℃~45℃、上級煎茶であれば60℃~70℃ですが、茎茶の場合はそれよりも高い温度のお湯を使います。
玉露の茎茶なら60℃~70℃、煎茶の茎茶なら90℃を目安に、沸騰したお湯を冷まして使いましょう。注ぐお湯の量は、上級煎茶を基準に一人当たり50~60mLが目安です。好みに応じて少し多目にするなど調整してもOKです。
3. 間合いはおよそ2~3分
お湯を急須に注ぎ始めてから最後の一滴を茶碗に注ぎ切るまでの「間合い」は、茎茶の場合2~3分程度です。まず少しお茶碗に注いでみて、色が出ているかを確かめます。茎茶は本茶よりも抽出しにくいため、このように水色を確認してから順番に注ぎ回します。
また、玉露や煎茶の本茶を入れる場合は、よりをかけた茶葉が自然にゆっくり開き、茶味を抽出するのを妨げないよう、茶葉を揺らさないように急須の扱いに気を遣う必要があります。しかし、茎茶の場合は、葉の部分が無いためその心配はなく、急須の扱いに神経を使う必要はありません。
芽茶は、茎茶とブレンドするなどアレンジも楽しめる
芽茶も出物茶の一種で、玉露や上級煎茶の仕上げ段階で、まだ葉になりきっていない芽先部分が選り分けられたものです。味わいは茶葉と同じで、例えば玉露の芽茶であれば、濃厚な甘味を感じることができます。
芽茶はそのままいただく他にも、茎茶とブレンドする方法があります。甘味と苦味のバランスも、ブレンドする割合を好みに合わせて調整することができ、より複雑で深みのある味わいを楽しめるのでオススメです。
芽茶の美味しい入れ方
芽茶の入れ方の基本は、煎茶と同じと考えてよいでしょう。ただし、芽茶はコロコロした小さな芽先を集めた茶葉ですので、茶こしを通してお茶碗に注ぐようにします。
1. 本茶よりも少なめに急須に茶葉を入れる
一人あたりおよそ2gが基本の量です。茶葉が小さい分よく抽出するので、通常の一人3g(大さじ1杯)よりやや少なめにします。
2. 本茶よりも少なめのお湯を急須に注ぐ
お湯の量は、煎茶の一人あたり50~60mLよりもやや少なめに入れます。
お湯の温度は、玉露のような甘味を楽しみたい場合は低温で、煎茶のようなすっきりした渋旨味を楽しみたい場合は高温と、好みに応じて調整します。
3. 求める味わいによって間合いを変化させる
芽茶は、まだ葉になる前の硬い芽の部分ですので、お湯を注いでも開きにくく、抽出にはやや時間がかかります。また、好みに応じても間合いを調整します。煎茶のような味わいを楽しみたい場合は1分、玉露のような味わいなら2分を目安にしましょう。
粉茶は、お寿司屋さんで出てくる「あがり」
粉茶とは、玉露や上級煎茶の製造過程で生まれる粉状の茶葉で、出物をふるいにかけて集められたものです。
私たちに馴染みがあるのは、お寿司屋さんで出される「あがり」です。あがりは、粉茶を茶こしに入れて、熱いお湯をくぐらせたものです。
市販のブレンド粉茶も出回っていますが、ご自宅に茎茶がある場合は、合わせて自家製ブレンド茶を作るのもオススメです。煎茶の粉茶に玉露の茎茶を加えると、粉茶が生み出す美しい水色とキリッとした味わいに、茎茶から出るまろやかな甘味がプラスされ、より美味しくいただけるでしょう。
なお、回転寿司においてあるものは、粉茶ではなく、「粉末茶」というもので、茶葉を粉末状にしたものです(粉茶とは別物です)。粉末茶は、客がセルフで入れることができるようにし、急須で入れるという店員さんの手間削減目的で開発されたものです。
粉茶は、形状は細かいですが、あくまで出物(副産物)であり、茶葉ですので、完全に溶かすことはできません。
粉茶の美味しい入れ方
1. 竹製の茶こしをあらかじめ湯通しし、茶葉を入れる
茶葉が非常に細かい粉茶は、竹製の茶こしを使って入れます。竹製茶こしが無い場合は、粉茶専用の急須を使います。普通の急須では茶葉が出てしまいます。
普通の煎茶を入れる時と同様、茶器はあらかじめ温めますが、この際茶こしも湯通しして湯慣らししておきます。
茶葉が細かい粉茶は、通常の茶葉よりも濃く出る傾向がありますので、煎茶の適量である一人あたり3gよりも少なめに加減して茶こしに入れます。
2. 熱湯でスピーディに入れる
粉茶を入れるお湯は、沸騰してすぐの熱湯を使います。お湯を注ぐとすぐに成分が溶出し始めますので、一般的な茶葉のようにゆっくりと開くのを待つ訳ではありません。
茶葉を入れた茶こしをお茶碗の上に被せるように持ち、そして急須を使わずに直接お湯を注ぎ入れます。まずお茶碗の半分くらいまで注ぎ、二巡目で色の濃さを見ながら注ぎ足し、調整をします。
一度に入れるお茶碗の数が多い時には、注ぎ回して色や味を均等にするのは難しいかもしれません。その際は、温めておいた土瓶や大き目の急須などで人数分の粉茶を受け、その上でそれぞれのお茶碗に注ぎ分けると、一度に均質な粉茶をたくさん入れることができます。
冷茶の美味しい入れ方とポイント!真の冷茶はペットボトル緑茶とは一味も二味も違う
ペットボトル入りの冷茶ばかり飲んでいるのはもったいない!
かつて緑茶といえば、温かいお茶として家庭で飲むのが主流でしたが、最近のペットボトル緑茶飲料マーケットの拡がりには目を見張るものがあります。
ブレンド茶から国産原料にこだわったものまで、バリエーションも非常に豊富になってきました。これだけ気軽に冷えた緑茶が手に入るようになると、ご自身で冷茶を入れる機会は減ってきていると思います。
しかし、やはり入れたての冷茶は非常に美味しく、作り方も意外と簡単です。自分好みの冷茶をご自宅でさっと作れるようになると、ペットボトル緑茶とは格段に違った冷茶のトリコになるはずです。
とても簡単!緑茶オンザロックの入れ方
まずは、基本の冷茶の作り方です。オンザロックなら手軽に作ることができます。
1. 一杯分の緑茶を濃いめに入れる:温かい緑茶を入れる時よりも、お湯の量を少なめにして入れます。
2. たっぷり氷を入れたコップを用意する:コップの縁までぎっしり氷を詰めます。
3. コップに緑茶を注ぐ:一か所に注ぐと、その部分の氷が先に溶けてしまうため、急須を回すように動かしながら緑茶を注ぎ入れます。
冷茶を入れる時は、濃いめに抽出するのがポイント
緑茶の美味しさは、茶味と香り、そして色のハーモニーです。冷茶を入れる際、最も気をつけるべき点は、私たち人間は、温度によって味や香りの感じ方が違うということです。
冷たい時は美味しかったアイスクリームが溶けてしまうと、甘すぎてとても食べられないという経験がある方は多いのではないでしょうか。その逆も同じことで、温かい時は美味しく感じられたものも、冷やしてみると味が物足りなくなるのです。
従って、冷たい緑茶を入れる場合も、このことを念頭に置き、いつもより濃いめに抽出する必要があります。
また、冷たいものから香りは立ち上らないため、冷茶の場合も香気はほぼ感じられません。香りは緑茶の美味しさにとって欠かせない要素ですので、なおさらそれ以外の要素、茶味と水色がしっかり出るように入れることが大切なのです。
煎茶の冷茶の美味しい入れ方
1. 茶器をあらかじめ冷やしておく
温かい緑茶を入れる前には、急須やお茶碗など茶器を温めておきますが、冷茶の場合も同様です。冷茶は、急須から一旦ティーポットに注ぎ、それをお茶碗に注ぎ回しますので、ティーポットとお茶碗に目一杯氷を詰め込み、しっかり冷やします。
お茶碗は、涼しげなガラス素材のものがオススメです。冷茶専用の器でなくても、小ぶりなガラスのコップなどで代用できます。また、冷たいお茶を入れると表面が結露します。テーブルを濡らしてしまわないように、茶托やコースターを準備するとスマートです。
2. 濃いめの煎茶を急須で作る
煎茶の茶葉を、人数分用意して急須に入れます(一人あたり約3g(大さじ1杯))。前述の通り、冷茶の場合は濃いめに入れますが、茶葉の量ではなく、お湯の量を減らすことで加減します。
3. 急須からティーポットに煎茶を注ぎ入れる
間合いを取り煎茶が抽出できたら、ティーポットに移しますが、煎茶を注ぐ前に、ティーポットを冷やすために使った氷が溶けていたら、その水を切っておきます。水が少しでもあると、煎茶の味が薄くなってしまうからです。
水を切ったら、急須からティーポットに煎茶を注ぎ入れます。緑茶オンザロックを入れる時と同様に、一か所に注ぐことのないように、急須を静かに動かしながら、回すように注ぎ入れます。
4. 素早く茶碗に注ぎ分ける
氷が詰まったティーポットに注がれた時点で、煎茶は既に冷えています。氷が溶け出さないうちに、お茶碗に注ぎ分けましょう。
温かい煎茶と同じく、お茶碗を並べて少しずつ順番に注ぎ回して、同じ味になるように調整します。お出しする前に、お茶碗の底についた水滴を拭き取る一手間も忘れないようにしましょう。
玉露の冷茶を美味しく入れるポイントは水!
玉露の冷茶は水出し方式で行います。お湯を使って抽出する一般の緑茶と違い、水の良し悪しが緑茶の味わいをダイレクトに左右するため、使う水にも気を遣わなければなりません。
美味しい緑茶を入れるのに適した水は、古来より「名水」であると言われてきました。つまり、山から汲んできた清水(天然水)ですが、現在では簡単に手に入れることはできません。
天然水を謳ったミネラルウォーターがありますが、日本ではペットボトル飲料に加熱殺菌を義務付けているため、汲みたての天然水ではない上に、加熱したことで空気が抜けてしまっています。空気が抜けた水は、茶葉の対流が上手く起こらず適していません。
現代において玉露の冷茶にベストな水は、「蛇口を開いてしばらく出しっ放しにした後に汲んだ水道水」です。
以前は、「水道水は美味しくない」、「カルキ臭など嫌な臭いがする」といったことがありましたが、現在はほとんどの水道局が高度浄水処理システムにシフトしていますので、このようなことはありません。
※高度浄水処理システム:以前の浄水処理よりも高度な浄水処理方法。以前は取り除くことのできなかった微量の汚れや臭いの元を除去することができる。
東京都などでは、水道水をペットボトルに入れて販売しており、ミネラルウォーターよりも水道水(高度浄水処理した水道水)の方が美味しいというのをアピールしているほどです。
蛇口を開いてしばらく出しっ放しにするのは、水道管に滞留していた古い水道水は使わずに、新鮮な水道水を使うためです。
このように、新鮮な美味しい水をいつでも簡単に手に入れることのできる時代になっていますので、これを使わない手はありません。
なお、高度浄水処理により、臭いは除去されていますが、ご自宅の水道管(or水道管の一部)に金属管が使用されている場合、水道水から金属臭がすることがあります。
しばらく出しっ放しにすれば、臭いが無くなる場合がほとんどですが、それでも気になる場合は、臭いは揮発性ですので、一度完全に沸騰させて冷ますことで、臭いが気にならないぐらいになるでしょう。
玉露の冷茶の美味しい入れ方
1. 温かい玉露の時より多めの茶葉を急須に入れる
冷茶の玉露の場合は、茶葉を多めに量ります。3人分を入れる場合は、大さじ4杯分(約12g)の茶葉を取り、あらかじめ冷やした急須に入れます。煎茶の冷茶とは違い、玉露の場合は茶葉で濃いめになるよう調整します。
2. 氷で冷やした水を急須に注ぐ
茶葉が吸収する分も加味して、一人分でおよそ20mLの水を人数分注ぎます。氷で冷やしたお水を使います。
3. 9分ほど待って茶碗に注ぎ分ける(間合いは10分)
水出し玉露の間合いは10分です。水出しのため通常よりもかなり長くなりますが、10分以上になるとカフェインが多く抽出され、苦味の勝った玉露になりますので、きちんと時間を計ります。
温かい玉露を入れる時のように、立ち上る独特の香りを楽しむことはできませんが、茶道の嗜みの一つとして、線香を焚いて香を楽しみながら待つという時間の過ごし方もあります。
9分あたりからお茶碗を並べ、少しずつ順番に注ぎ、10分で全ての茶碗に注ぎ終えるようにします。最も美味しいとされる「黄金の一滴」も残さず注ぎ切りましょう。
4. 二煎目の入れ方
玉露は冷茶の場合も、二煎目をいただくことができます。茶葉は既に水分を含んでいますので、水は少なめにし、間合いは一煎目よりも短く、6~7分程度とします。
ほうじ茶、玄米茶の冷茶は、カテキン、カフェインも少なく夏バテ防止に最適!
夏の暑い日にオススメしたいのが、ほうじ茶や玄米茶など、加工茶を使った冷茶です。
水分補給とリフレッシュのために緑茶をいただく場合は、さっぱりした緑茶をゴクゴクと飲みたいものですが、その点ほうじ茶や玄米茶は、カテキンやカフェインがあまり含まれていないため最適です。
また、夏場の水分補給に緑茶を飲むことは、胃液の分泌を促し、消化を助けるだけでなく、発汗によって失われたビタミン類の補給にも役立つなど、夏バテ防止につながります。簡単に作ることができますので、ぜひ冷蔵庫に常備して家族皆でいただきましょう。
ほうじ茶、玄米茶の冷茶の美味しい入れ方
1. 沸騰したお湯に茶葉を投入する
大きめのやかんに2Lほどの水を沸かします。完全に沸騰したら、火を止めずに、やかんに直接茶葉を入れます。茶葉の量はおよそ30gです。一つかみが約15gですので、二つかみ分です。手早く入れるためにも、手で量るのに慣れておくと良いでしょう。
2. 茶葉を入れたら、すぐ火を止める
ぐらぐらと煮出してしまうと、お茶が濁ってしまうため、茶葉を入れたらすぐに火を止めます。
3. 別の容器で粗熱を取ってから冷蔵庫で冷やす
火を止めた後も茶葉からの抽出は続きます。時間が経つと、苦味の元となるカフェインの含有量が増えてしまうので、火を切って2分ほどしたら、冷茶ポットなどにお茶を移します。粗熱が取れるまで20~30分間そのまま放置したら、冷蔵庫に入れましょう。
なお、冷茶は鮮度が美味しさのキモですので、なるべく1日で飲み切ってください。
冷茶と言えば麦茶は外せない!麦茶は子供にも安心で栄養も豊富
夏の冷茶と言えば、麦茶を思い浮かべる人も多いでしょう。原料は、大麦を殻ごと炒ったもので、栄養価が高いだけでなく、カフェイン、カテキンを全く含んでおらず、小さな子供にも安心して与えることができるお茶です。
茶の樹の葉が原料ではないため、緑茶はもちろんお茶にも含まれませんが(お茶の一種ではないですが)、一般的にはお茶の一種として認識されており、「広義お茶」に属すると考えて良いでしょう。
現在市販されている麦茶は、1回分ごとにティーバッグで小分けにされたタイプが多数派です。水出しだけで色や味が出せるものもあるなど、非常に手軽な印象ですが、やはり丸粒の大麦をやかんで煮出したものは、香りも味わいも際立っています。
お時間のある時には、ぜひ本物の麦茶の美味しさを一度お試しください。
麦茶の冷茶の美味しい入れ方
1. 沸騰したやかんのお湯に麦茶を入れる
やかんでお湯2Lほどをしっかり沸騰させたら、約50gの麦茶(大麦)を入れます。手で量る場合、一つかみが目安となります。
2. すぐに火を止め、そのまま粗熱をとる
濁りを防ぐためにも火はすぐに止めます。麦茶の場合はやかんに入れたまま粗熱を取りますので、そのまま20~30分置き、その後冷茶ポットなどに移し替え、冷蔵庫に入れましょう。
お正月の縁起物「大福茶」の美味しい入れ方とポイント!
大福茶は、平安時代から続く無病息災を願う伝統的慣習
大福茶(おおぶくちゃ)は、梅干しや結び昆布、山椒の実などが入ったお茶のことです。元旦の朝に家族でいただき、その年の無病息災を祈願します。
その起源は、平安時代の京都に遡ります。京都に疫病が流行した時、六波羅蜜寺の空也上人が、自分で彫った十一面観音像を引き連れ、人々にお茶を振る舞いながら歩き、疫病を鎮めたそうです。この時振る舞ったのが、梅干しを入れたお茶でした。
時の村上天皇がこの徳にあやかり、それ以降の元旦には梅干し入りのお茶を飲むようになったことから、庶民にもお正月の行事として広まりました。
「天皇が飲むお茶」という意味から皇服茶や王服茶と呼ばれ、後に庶民に福をもたらす「大福」の文字が当てられました。関西地方で始まったこの行事は、やがて全国に広まることとなったのです。
大福茶の美味しい入れ方
1. お正月らしい茶器を準備する
新年をお祝いする行事ですので、松竹梅や鶴のモチーフづかいなど、お祝いにふさわしい柄の茶器を用意します。黒漆の茶托なども一緒に使うと良いでしょう。
2. 梅干し、昆布、山椒の実を茶碗に入れる
茶器を温めてから、茶碗にあらかじめ山椒の実、結び昆布、種を取った梅干しなどを入れます。乾いているものを先に入れると、箸を綺麗に使うことができます。
また、お茶屋さんで販売されている「大福茶セット」を購入すれば、これらの具材を手軽に揃えることができます。
3. 濃いめの緑茶を入れる
昆布や梅干しの味を引き立てるのは、濃いめで熱々の緑茶です。煎茶でも番茶でも、ご自分のお好きな茶葉を使って、濃いめの緑茶を入れましょう。
4. 茶碗に緑茶を静かに注ぐ
緑茶を茶碗に注ぎます。具が入っていますので、静かに注ぎ入れるのがポイントです。お出しする時には、楊枝も添えてあると、具材も召し上がっていただけます。
様々なものに湯を注ぎ、お茶としていただく「代わり茶」の美味しい入れ方とポイント!
祝いの席に重宝される「花茶」、お茶席の待ち時間にいただく「香煎」
古来より日本には、代わり茶と呼ばれる飲み物があります。例えば「桜湯」は、結納の席など慶事には欠かせません。これは、7分咲の八重桜の花を塩漬けにしたものをお湯で戻していただくものですが、お茶碗の中で桜の花が開き、水色も薄いピンクで気分が華やぎます。
他にも、「蘭茶」は塩漬けにした蘭の花を使った代わり茶です。お湯を注ぐと花びらが開き、うっすらと若草色の水色を楽しむことができます。
最近では、青森県五所川原市で開発された新種のりんごの花を使った花茶が開発されるなど、この分野はこれからも目が離せないでしょう。
また、炒った大麦や玄米に、山椒や陳皮など漢方に使われる薬草を混ぜてひき、粉にしたものにお湯を注いでいただく「香煎」も有名です。
香煎の種類は様々で、香り高い紫蘇や梅の香煎もあり、お茶席でお抹茶をいただく前に振舞われたり、煎茶道の世界では香煎席が設けられることもあります。
花茶の美味しい入れ方
1. 熱いお湯を用意する
花茶を入れる時のお湯の温度が低いと、塩気が生臭く感じられます。沸騰したての熱いお湯を用意しましょう。
2. 花についた余分な塩を払う
塩漬けの加減にもよりますが、余分な塩分は箸などを使って払うか、水で軽く流します。
3. お茶碗一つに花一つを入れ、湯を注ぐ
温めたお茶碗に、塩漬けの花を一つずついれ、お湯を注ぎ入れます。すぐにお出しして、冷めないうちに召し上がっていただきましょう。お花も食べられますので、楊枝を添えてお出しすると親切です。