緑茶

お茶は健康に良いというイメージは、おそらく多くの人が何となく持っているものでしょう。実際、古代中国では当初、薬としてお茶を食していたという記述も残されています。

 

けれども、「何が」「どのように」健康に良いのかと問われると、曖昧な答えしか出ないのではないでしょうか?今回は、お茶の健康成分について詳しく見ていきましょう。

 

緑茶にはたくさんの健康成分が含まれている!

お茶には多くの健康成分が含まれているということは、既に立証されています。例えば、お茶に豊富に含まれるカテキンには、血糖値の上昇を抑える作用や、抗がん作用があることが知られています。

 

現在もお茶の健康効果についての研究・検証は、多くの場合日本を中心に、緑茶を使って進められています。動物実験から人間に対する効果を調べる臨床実験も行われており、分子生物学の見地から、お茶の成分がどのように人体に対して影響を及ぼすのか、という仕組みを解明しようという試みも行われています。

 

緑茶には多くの健康成分が含有されており、その性質によって3つに分類できます。

①水に溶けやすい水溶性ビタミンで、ビタミンB群やビタミンCなど

②水に溶けにくく油(脂)に溶けやすい脂溶性ビタミンで、ビタミンAやビタミンEなど

③消化されない食物繊維など

 

健康成分は実に多岐にわたり、お茶が栄養の宝庫であると言われるのも納得かと思います。

 

緑茶の最大の魅力は、たった1杯のお茶の中に、少しずつでも多くの健康成分が含まれることはもちろん、それぞれの成分が互いに作用しあった相乗効果によって、さらに高い効果が望めるということです。健康成分の中でも、ビタミンとミネラルはとても豊富です。

 

ビタミン類で1番多く含まれているのは、ビタミンCです。抗酸化力の高さで知られており、コラーゲンを生成する際には不可欠の成分です。他にも、ビタミンA(βカロテン)、B群、Eが含まれています。特に煎茶は、ビタミンCを多く含んでいます。

 

ミネラル類では、カリウムとカルシウムが多く含まれています。カリウムは身体の細胞内の水分量を調節し、神経や筋肉の働きに大きな役割を果たす成分で、含有ミネラルのうち約半分を占めます。

 

他にも、整腸作用を持つ食物繊維、虫歯予防効果のあるフッ素、血糖値降下作用のあるポリサッカライド(多糖類)などが含まれています。さらに、コエンザイムQ10は悪玉コレステロール(LDL)の酸化を防止する効果があり、通称GABAと呼ばれているγ-アミノ酪酸には血圧降下作用があります。

 

お茶に含まれる3大成分「カテキン、テアニン、カフェイン」の健康効果

お茶にはたくさんの健康成分が含まれていますが、量、質ともに特筆すべき成分は、カテキン、テアニン、カフェインの3つです。

 

これらは、緑茶、紅茶、ウーロン茶全てに共通して含まれており、お茶の味にも大きな影響を及ぼす3大成分でもありますが、同時に健康成分としても大きな役割を持っています。

※カテキン、テアニン、カフェインのお茶の味に関する考察については、「お茶の味は、カテキン、テアニン、カフェインが決める」を参照ください。

 

カテキンの抗酸化作用で活性酸素を除去!

人間はもちろん、あらゆる動物は呼吸で取り入れた酸素によって、食事で摂取した糖質や脂質を分解し、エネルギーを作り出し、生命を維持しています。脂質はグリセリン(グリセロール)と脂肪酸に分解され、グリセリンは糖質と同様にエネルギーとして使われます。

 

一方、脂肪酸には大きく分けて、炭素(C)と炭素(C)の結合に二重結合がある「不飽和脂肪酸」と、二重結合を持たない「飽和脂肪酸」の2つがあり、私達の身体は生命活動維持の材料として、その両方をバランス良く利用しています。

ステアリン酸(飽和脂肪酸)
オレイン酸(不飽和脂肪酸)

 

二重結合を持つ不飽和脂肪酸は、その二重結合ゆえに不安定で酸化されやすい性質を持っています。不飽和脂肪酸は、体内で酸化されると「過酸化脂質」を生み出し、過酸化脂質は「活性酸素」を生成します。

 

活性酸素は、色々な物質と結びつきやすい性質を持つため、脂質と反応して過酸化脂質を更に生み出すという悪循環が起こります。過酸化脂質は、動脈硬化の原因とされるほか、がんの発生要因の1つとも考えられており、健康に悪影響を及ぼす物質とされています。

 

従って、脂質の摂りすぎに注意するのは大切ですが、食事に気を使っていても、呼吸で体内に取り込んだ酸素のうち約2%は活性酸素になっていると言われており、完全に排除することはできません。

 

カテキン類は、この活性酸素を除去し、過酸化脂質が生み出されるのを阻害する作用を持っています。これがカテキン類の「抗酸化作用」です。

 

カテキン類の抗酸化作用は、発がん抑制、LDL(悪玉コレステロール)上昇抑制、血圧上昇抑制などの健康維持機能につながることが、近年の研究によって明らかになってきています。

 

また、女性や美に関心のある方には馴染みかと思いますが、「抗酸化作用」「活性酸素除去」は、近年、アンチエイジング、美容の重要キーワードとなっており注目されています。

 

カテキン類の中でも、エピガロカテキンガレート(EGCG)は、特に強い抗酸化作用を持っています。抗酸化作用と言えば、ビタミンC、ビタミンEがよく知られていますが、エピガロカテキンガレート(EGCG)の抗酸化作用は、ビタミンCの約80倍、ビタミンEの約20倍とされています。

 

お茶に含まれているカテキン類は、エピガロカテキンガレート(EGCG)の他に、エピカテキン(EC)、エピカテキンガレート(ECG)、エピガロカテキン(EGC)の3種類があります。合わせて4種のカテキン類は、茶葉中に10~20%含有されており、その約半分を強い抗酸化作用があるエピガロカテキンガレート(EGCG)が占めています。

 

4種類のカテキン類は、緑茶、紅茶、ウーロン茶全てに共通して含まれていますが、他にもそれぞれの茶葉によって違う種類のカテキン類が含まれています。

 

緑茶に含まれているカテキン類は数十種類あり、エピアフレゼキンやエピガロカテキン-メチル-ガレート、エピガロカテキン-3-O-ガレート(メチル化カテキン)などがあります。

 

茶葉を発酵させて製造するウーロン茶や紅茶の場合は、発酵過程でカテキンが酸化重合し転換して生成されるテアフラビンやテアフラビン-3-ガレート、テアシネンシンなどが発見されており、全部で100種以上のカテキン類が含まれていると言われています。

 

全て化学構造こそ様々ですが、効能は基本的に同じです。そもそもカテキンは、抗酸化作用で知られているポリフェノールの一種なので、その作用はポリフェノールの特性に由来するものと考えて間違いはありません。

 

ポリフェノールの仲間には、お茶に含まれるカテキンの他には、赤ワインに含まれるアントシアニン、柿に含まれるシブオールなど、実に多種多様なものがあります。

 

ポリフェノールは、「ポリ=多数の」という名前そのままに、「多数のフェノール」によって構成されている物質です。フェノールというのは、ベンゼン環にヒドロキシ基が結合したもので、酸化されやすい性質を持っています。そのため、体内では活性酸素と優先的に結合し、細胞を活性酸素から守る働き(抗酸化作用)をしてくれます。

※ベンゼン環:炭素原子(C)が6角形状に配置された化学構造を持つ物質。
※ヒドロキシ基:OH基とも言われ、活性酸素を安定させる抗酸化作用を持つ。

ベンゼン環とフェノール

 

つまり、カテキン類の抗酸化作用は、カテキン特有のものではなく、ポリフェノールの健康効果が引き継がれたものというわけです(※カテキンは、ポリフェノールの一種)。

 

紅茶、ウーロン茶に含まれるポリフェノールを、最近では「紅茶ポリフェノール」、「ウーロン茶ポリフェノール」などと呼んでいますが、これらも化学構造は少しずつ違うものの、健康効果などの働きはほぼ同様です。紅茶には、「テアフラビン」と呼ばれるカテキンの2つの分子が結合して生成される物質も含まれますが、これもまた働きはほぼ同様です。

 

カテキン類の吸着性・殺菌力で、風邪・インフルエンザを防ぐ!

「吸着性」というのは、文字通り「吸着させる性質」です。これはカテキンに多く含まれるヒドロキシ基(OH基)によるものです。

 

インフルエンザウイルスは、細胞表面にあるスパイクと呼ばれる突起部分で、喉粘膜などの細胞に結合して感染するのですが、ヒドロキシ基(OH基)は、ウイルスのスパイクを先に覆ってしまい、粘膜との結合を阻止してくれます。

インフルエンザウイルス

 

カテキン類には強い殺菌力もあり、これは昭和大学医学部名誉教授・島村忠勝氏の臨床実験でも明らかになっています。家庭で飲まれている緑茶の濃度の4分の1にあたる0.5%の緑茶に、インフルエンザウイルスを入れて5秒間かき混ぜたところ、ウイルスが完全に消滅していたのが確認されました。

 

その後も実験は重ねられ、殺菌力は、紅茶に含まれているテアフラビン(カテキン分子が2つ結合したもの)の方が、緑茶のカテキンよりも強く、即効性も高いことが分かりました。

 

この特性を生かし、紅茶によるうがいでインフルエンザ予防ができるかどうかという実験も行われています。

 

297人の被験者を対象にして行われた実験では、片方のグループには紅茶浸出液を使って1日2回のうがいをしてもらい、もう片方には何もせずに5か月間過ごしてもらい、インフルエンザに対する感染率を調査しました。

 

結果、うがいをしたグループの感染率は35.1%だったのに対し、何もしなかったグループは48.8%となりました。

 

被験者は同じ職場で働く社会人から選出され、浸出液は紅茶エキスを0.5%に希釈したものを1回100ml使用しました。2つのグループの感染率の結果から、紅茶によるうがいは、インフルエンザ予防策として有効という結論が得られました。しかもワクチンと違い、インフルエンザ型に左右されることもありません。

うがい

 

うがいには上手い下手がありますが、とにかく喉の奥まで届くようにするのが大切です。紅茶ならば、普段の4分の1~10分の1程度の薄さでもよいので、出がらしで十分ですが、緑茶の場合は、出がらしではなく、1煎目もしくは2煎目を使うようにしましょう。

 

冬だけではなく、毎日の習慣にすると、喉がカテキンによって潤い、抵抗力がついてウイルスや菌に感染しにくくなります。

 

カテキンの吸着性は、口臭予防や虫歯の予防にも効果があり、口腔内の衛生状態に対して良い作用が認められています。

 

お茶にはカテキン以外にも、歯のエナメル質を溶けにくくし、溶け出したミネラル分を再び歯に沈着させて補修する効果のあるフッ素も含まれているため、食事の後のお茶は、飲用だけでなく、口をすすぐのにも利用すると、より効果が上がります。

 

カテキンは、アレルギーにも効く!

花粉症などにも、カテキン類は効果があります。アレルギー反応を引き起こすヒスタミンの分泌を吸着力によって抑え、炎症抑制作用によってアレルギー反応により出た辛い炎症を抑える助けにもなります。

 

特に、紅茶用品種として開発された「べにふうき」によって作られた緑茶には、強いアレルギー抑制効果があることが知られています。

べにふうき

 

「べにふうき」は、お茶に含まれるカテキン類の中でも最強の殺菌作用を持つ「エピガロカテキンガレート(EGCG)」と、アレルギーによる初期反応を抑える「エピガロカテキン-3-O-ガレート(メチル化カテキン)」の含有量が他の緑茶よりも多い上、「ストリクチニン」というヒスタミンを抑える抗アレルギー成分が含まれているという特徴があります。

 

花粉症やアトピーの症状改善効果が期待される「べにふうき」ですが、アレルギーによるかゆみなどの症状に対しては、飲用だけでなく直接皮膚に塗布したり、目の洗浄に使ったりすることでも、症状緩和の効果があると言われています。

 

エピガロカテキン-3-O-ガレート(メチル化カテキン)は、5分以上茶葉を煮立たせてから飲むと、効率よく摂取できるとされていましたが、現在は茶葉を丸ごと摂取できる粉茶タイプも出ています。

まるごと健康粉末茶 べにふうき

 

糖尿病予防にもカテキンが有効

カテキンは、糖尿病の予防にも効果的です。カテキンは、消化器官内で、アミラーゼなどの糖質分解酵素の働きを阻害する作用があります。これにより、でんぷんなどが消化吸収されやすいグルコースに分解されるのを抑制し、糖質の消化吸収を遅らせることができます。

 

経口ブドウ糖負荷試験というブドウ糖を飲む試験でも、一時的に上昇した血糖値が、カテキンを含有するお茶を飲むとすぐに下がることが証明されています。

 

お茶を飲むと、カテキンは小腸から吸収され、血液に入ります。身体に必要な他の栄養素も同じように吸収されますが、カテキンの場合、吸収量はごくわずかです。

 

吸収されても、本来は人間の身体に存在しない物質であるカテキンは、体内では異物として認識され、腎臓まで巡ってくるとグルクロン酸と呼ばれる物質と結合し、グルクロン酸抱合体としてすぐに排出されます。

 

これら一連の流れ(摂取から排出まで)は、3~4時間程度ですので、飲用によってカテキンの効果を十分に得たいならば、毎日こまめにお茶を飲むことが大切です。

 

テアニンでリラックス

お茶にはカフェインが含まれているので、興奮作用があるはずなのですが、実際にお茶を飲むとホッとしたり落ち着いたりするのは、茶葉に2~3%程度含まれるテアニン(アミノ酸の一種)にストレス抑制効果があるためです。

 

人間がリラックスできているかどうかを調べるには、脳波測定によってアルファ波(α波)が出ているかどうかを調べます。静岡県立大学の横越英彦名誉教授による実験では、テアニン摂取後、40分以降にアルファ波が出現することが分かりました。

アルファ波が出ている人

 

実験では、18~22歳の女性50人のうち、精神的、身体的不安度を調べて不安を強く感じているグループと不安をあまり感じていないグループ、それぞれ4人を被験者として選出、それぞれに水またはテアニンを含む水を飲用してもらい、脳波を測定しました。

 

さらに、この実験後のヒアリングでは、不安を強く感じていたグループの半数から、テアニン入りの水を飲んだ後、手足の指先が温かくなったという回答が得られました。これはリラックスした結果、手足の末端の毛細血管が広がったため、血行が良くなったためではないかと考えられます。

 

以降も様々な実験が重ねられ、テアニンのリラックス効果が確かめられています。

 

テアニン摂取で、GABAが増加し、ストレス軽減になる

静岡県立大学薬学部の海野けい子准教授は、マウスを使った実験によって、テアニンを摂取するとストレスが軽減され、脳機能の低下が抑制されることや、脳の海馬においてグルタミン酸の量が低下し、GABAが増加するという研究結果を報告しています。

 

「GABA」は「γ-アミノ酪酸」の別称ですが、GABAという名前の方がよく知られているでしょう。グルタミン酸がデカルボキシラーゼという酵素と反応すると、GABAと二酸化炭素に分解されます。

 

GABAもグルタミン酸も同じく抑制性の神経伝達物質なので、摂取されたテアニンはGABAとグルタミン酸、それぞれの量のバランスを脳内で調節していると言えます。

 

実験は静岡県立大学薬学部の学生たちを被験者として行われ、それによると、テアニンはストレスを感じやすい(不安を感じたり緊張したりしやすい)人に対して、過剰に緊張しないように抑制する効果があるということが分かりました。

 

前述の通り、テアニンはお茶に含まれるアミノ酸なので、その後は緑茶を飲んだ場合のストレス緩和効果について実験がされています。

 

マウスを使った実験では、テアニンが豊富に含まれる玉露など高級緑茶では、興奮作用のあるカフェインの含有量が高くともテアニンも豊富なため、ストレス軽減効果があることが分かっています。

 

収穫後の生茶葉に熱水シャワーを当てて処理を施した低カフェイン茶でも、テアニンは玉露より減るものの、カフェイン量が少ないため、同様のストレス軽減効果が認められています。

 

ただし、煎茶の場合は、玉露よりも含まれているテアニンが少ないのに対し、テアニン量の割にカフェイン量が多いため、マウスの実験でもストレス緩和効果は弱いという報告があり、人間についても同様であろうと考えられています。

 

緑茶にはリラックスさせるテアニンと、緊張・興奮させるカフェインという、相反する作用を持つ物質が両方含まれています。ただし、テアニンは低温で、カフェインは高温で抽出される性質があるので、この違いを利用し、低温で入れてうまくテアニンを抽出した緑茶であれば、リラックス効果を十分得ることができます。

 

最近は、ペットボトルの緑茶でも低温抽出のものが出てきています。

低温抽出ペットボトル緑茶

 

眠気覚まし、ダイエットには、カフェイン

カフェインはとても有名ですから、お茶の効果というと、すぐにカフェインの持つ興奮効果を思い浮かべる人も多いでしょう。お茶の機能研究の始まりもカフェインで、その興奮効果は、1827年にイギリスのK・オードリー氏をはじめとした化学者たちによって発見されました。

 

興奮効果もそうですが、その後に解明された利尿作用、覚醒効果などのカフェインの機能は、多くは人々の経験から発見されました。実際、この辺りは実感した人も多いでしょう。交感神経に作用するカフェインは、興奮させる作用があり、結果的に眠気を抑える効果や、利尿効果を促したりするのは今ではよく知られています。

 

カフェインの持つ効果の中で、近年分かってきたものとしては、効率の良い脂肪燃焼を促す効果が挙げられます。

 

カフェインが中性脂肪を分解して、遊離脂肪酸として血液中に放出するため、エネルギーとして利用されやすくなるというものですが、血中カフェイン濃度は、摂取してから30分後に最も高くなるので、運動の20~30分前にお茶を摂取するのが良いでしょう。

 

他にもある、お茶に含まれている健康成分

お茶の3大成分「カテキン、テアニン、カフェイン」の他にも、お茶には健康に良い成分がたくさん含まれています。

 

緑茶に多く含まれるビタミンC

ビタミンCを知らない人は少ないでしょう。強い抗酸化作用を持ち、疲労回復に加えて、メラニン色素の生成を抑制してシミを防ぐ美白・美肌効果でもよく知られています。

 

ただし、水溶性で熱に弱く、酸化されやすいという弱点があるのですが、茶葉の中にはカテキンも含まれているため、その酸化抑制作用によって熱湯で入れた後も破壊されません。

 

ビタミンCは光合成によって生成されるため、非発酵茶である緑茶には特に豊富に含まれ、収穫前に日光を遮断してしまう玉露や碾茶ではなく、煎茶に最も多く含まれています。

 

血糖値の抑制にはポリサッカライド

ポリサッカライドは、近年、血糖値を抑える効果があるとして注目を集めている多糖類です。

 

化学的には、L-アラビノース、D-リボース、D-グルコースなどが結合した物質で、熱に弱いという特徴があります。従って、抽出する際には熱湯ではなく、水出しで入れましょう。新茶よりも、三番茶、秋冬番茶などの番茶に多く含まれています。

 

食物繊維で腸内環境を整える

食物繊維は、便秘解消はもちろん、大腸がんの予防など、主に腸内環境を整えるのに効果的な成分です。

 

食物繊維には水溶性、不溶性の2種類があり、普通にお茶として飲用するだけでも水溶性は摂取できますが、不溶性の食物繊維はいわゆる「出がらし」に含まれているため、出がらしに醤油などをかけ、おひたしとして食べれば、不溶性食物繊維も摂取することができます。もちろん、抹茶などの粉茶ならば、飲用でも両方の食物繊維を摂取することができます。

お茶の出がらしのおひたし

 

強力な抗酸化作用を持つβカロテン

βカロテンは、脂に溶けやすい性質を持つ脂溶性ビタミン類で、体内でビタミンAが不足すると、その不足分だけビタミンAに変換されるため、「プロビタミンA」とも呼ばれます。

 

LDL(悪玉コレステロール)の酸化を阻害する働きを持ち、動脈硬化予防にも効果があります。他にも、肌荒れ、シミ、しわの予防などの美肌、爪や髪の健康を保つなどの美容効果も期待できます。

 

GABAをたっぷり摂れるギャバロン茶

「ギャバロン茶」というものをご存じでしょうか?お茶に含有する健康成分の1つ「GABA」を豊富に含んだお茶です。普通の緑茶の20~30倍程度のGABAが含まれています。しかし、ギャバロン茶は、最初からそれを目指して作られたわけではありませんでした。

ギャバロン茶

 

現在、茶農家の収入の大半は、5月に収穫する一番茶、いわゆる新茶が占めています。本来は、その後も夏や秋にかけて二番茶、三番茶としての収穫が可能なのですが、出荷はおろか収穫されることもなく、そのまま芽を刈り落としてしまうこともあります。

 

この無駄になってしまう二番茶、三番茶の活用方法の模索が、ギャバロン茶の始まりでした。

 

まずは収穫後の二番茶の芽を保存する方法として、野菜の鮮度を損なわずに貯蔵・運搬するために使われる輸送技術を転用し、窒素ガスの中で保存する方法が試されました。5~10時間窒素の中で保存した後に製茶すると、独特の蒸れたような臭気を持ったお茶ができあがりました。

 

この臭気の素を調べたところ、GABAが豊富に含まれているということが判明し、後のギャバロン茶誕生につながります。ポイントは、当然ながら窒素ガスによる保存でした。一時的に無酸素状態にすることで、製茶工程の中で起きる反応が普通の緑茶とは違い、テアニンやたんぱく質からグルタミン酸が生成され、それがGABAに変化したのです。

 

ギャバロン茶の効能の第1は、降圧作用です。これは、高血圧のラットを使った実験で立証され、その後、食事療法のみで治療中の高血圧症患者を対象とした臨床試験も行われ、効果が認められています。

 

しかも、降圧剤などの薬剤とは違い、低血圧、正常値の人が飲んだ場合には降圧作用はなかったことから、血圧を正常値に戻しそれを維持するという作用があることが明らかになりました。従って、継続的に飲用することで高血圧の予防効果があり、かつ副作用の心配もありません。

 

他にも、血中アルコール濃度の急激な上昇を抑え、かつ低下させる効果も実験によって立証されています。お酒を飲む前などに摂取しておくことで、悪酔いや二日酔いを防ぐことにつながります。

 

アルコールだけでなく、食後の血糖値の急上昇、塩分の摂りすぎによる血圧上昇にも抑制効果があるため、脳卒中や認知症の予防にも効果があるということが判明しつつあります。

 

また、前述の通り、GABAにはストレス軽減効果、リラックス効果もあるため、ギャバロン茶を飲むことで、これらの効果を得ることもできます。

 

ギャバロン茶の製法については、開発者の意向により特許申請がされなかったこともあり、以後、GABAを使った様々な製品が開発、市場に登場しています。

GABAチョコレートとGABA醤油