様々な中国黒茶

黒茶は、緑茶や紅茶、ウーロン茶などと違い、微生物の力を借りて茶葉を発酵させて作ります。製法は独特で、味もそれぞれがとても個性的です。(※参照:黒茶の定義

 

日本産の黒茶は種類も少なく、黒茶と言われてもピンとこないかも知れませんが、中国には多種多様な黒茶があり、高い人気を誇っています。今回は、中国黒茶の種類と各々の特徴について見ていきましょう。

 

メジャーな中国黒茶「プーアル茶」の散茶と緊圧茶

日本で一番簡単に手に入る中国黒茶は、言うまでもなくプーアル茶でしょう。中国黒茶という名を知らなくても、プーアル茶なら知っている、飲んだことがあるという人も少なくないはずです。

日本で販売されているプーアル茶

 

昔から、雲南省のプーアル(普洱)で集荷、出荷されるお茶の総称でしたが、21世紀初頭のブームをきっかけに、2008年、中国政府から地理標識保護製品に指定されました。

雲南省の場所

 

地理標識保護製品というのは、簡単に言えば、その土地や地域に準じた中国政府認定ブランドのようなものです。

 

プーアル茶の場合は、原料には雲南省昆明市、プーアル市などの周辺11の市や州に属する639の村という指定エリアで収穫された「雲南大葉種」の茶葉で作られた荒茶を、定められた方法で加工されたもののみが、プーアル茶と名乗ることができるという規定があります。

雲南大葉種

 

雲南大葉種というのは、茶の樹の種類で、芽が大きいこと、葉が白毫に覆われており、成分はカテキン類などの他、水に溶けだしやすい可溶成分が多く含まれているのが特徴です。

※白毫:葉などを覆う白く細かい毛。「はくごう」と読む。

 

雲南大葉種の茶葉1g中のカテキン含有量は、雲南小葉種より30~60mg多く、ポリフェノールは5~7%、その他の可溶成分も3~5%多く、濃く味わい深い黒茶に仕上がります。

雲南大葉種雲南小葉種

 

水色も鮮やかなはっきりとした赤色で、濃い味が何煎も楽しめる成分がぎっしりと詰まった茶葉と言えます。

※水色:入れた時のお茶の色。「すいしょく」と読む。

プーアル茶の水色

 

樹齢の高い茶樹の葉を使った古茶樹プーアル茶は、品質が高いとされ、長期間寝かせることで価値のあがる高級品として取引されています。20年、30年以上寝かせたプーアル茶は珍重され、高値にもなります。

古茶樹プーアル茶

 

プーアル茶には、2003年に雲南省質量技術監督局が制定した「雲南地方標準」というものがあり、水分含有量や入れたお茶の成分、衛生指標などを含めた品質によって「特級、1級~10級」まで、11の等級に分けられています。

 

日本でも見かけるプーアル散茶

中国茶では、日本茶や紅茶と同じような茶葉の状態のものを「散茶」と呼びます。日本でもよく売られている茶葉のプーアル茶は、このプーアル散茶です。

プーアル散茶

 

プーアル茶の散茶には、前述の雲南省質量技術監督局による茶葉の11段階の等級にプラスして、熟成度の特に高いものには別の等級が付けられます

 

具体的には、雲南省質量技術監督局の「特級、1~10級」までの11等級がある他、それぞれのメーカーによって特級の上に「宮廷」、「金芽」、「金毫」などの等級が設定されています。

宮廷プーアル茶、金毫プーアル茶

 

独自基準のため、それがそのまま品質を表すとは言えませんが、特級以上のプーアル茶は金毫(こんごう)と呼ばれる金色の細い毛に覆われており、味もまったりとした甘みがありとても美味なものが多いです。

金毫の付いたプーアル散茶

 

金毫は、若い茶葉に多く存在するもので、若葉ほど養分を多く含んでいるため、上級茶葉の1つの目安とされています。

 

プーアル緊圧茶の王様「沱茶」

日本ではあまり目にしないかもしれませんが、本来、中国黒茶のほとんどは「緊圧茶」という、蒸した茶葉をつき固め、乾かして作られる固形のお茶です。

緊圧茶

 

製法、使われる茶葉、重さによっても分けられ、実に様々な緊圧茶がありますが、雲南省産の沱茶(だちゃ)は、数あるプーアル緊圧茶の中でも最高の品質とされています。

雲南省産の沱茶

 

四川省の沱江近辺で取り引きされていたことから、沱茶と呼ばれるようになったとされており、清代以降は碗の形が特徴となっています。

沱江

 

明代には普通に固めた緊圧茶であったものを、清代の光緒28年(1902年)に下関永昌祥、複春和などの茶の取り扱い業者が、研究、改良を重ねた結果、現在の碗形になりました。

 

最高品質の沱茶とされるのは、プーアル散茶の中でも1級、2級とされる高品質の茶葉を使い、雲南省下関で製造されたものです。入れると深く熟成した良い香りと、しっかりした味わいが楽しめます。

最高品質のプーアル沱茶

 

また、重慶市周辺でも、緑茶を原料とした沱茶が作られていますが、当然ながら、味や香り、色は全く違い、緑茶に近いものになっています。

重慶沱茶重慶市の場所

 

沱茶には血液中のコレステロールを低下させる作用があるという研究結果が、1970年代後半に発表されると、ヨーロッパや他の地域でも好まれるようになり、1986年にスペインで賞を受賞したのを皮切りに、ヨーロッパ各国及びアメリカで、食品関連の賞を受けるようになりました。

 

現在はヨーロッパ、アメリカ諸国を始め、20ヶ国以上の国々に輸出されており、大きさの規格も本来の100gの他、3g、5g、50gという小さいものから、125g、250gと大きめのものが加わって6種類となり、年間生産量も4000tを超えるほどの人気となっています。

3g、50g、250gの沱茶

 

七子餅茶は、子孫繁栄の縁起物

七子餅茶(ななこへいちゃ)は、3~8等級のプーアル散茶で作られるプーアル緊圧茶です。

七子餅茶

 

略して餅茶と呼ばれることもある七子餅茶のルーツは、宋代に盛んに作られた「龍鳳餅茶(りゅうほうへいちゃ)」です。当初の呼称は圓茶(えんちゃ)で、七子餅茶と呼ばれるようになったのは1960年代になってからです。

龍団鳳餅茶

 

「七子」というのは、直径20cmの円盤型に固めた重さ357gの緊圧茶を、七つずつ束ねて竹の葉で包むところからつけられたもので、「七子」は子孫繁栄の意味もある縁起の良い言葉であるため、香港、マカオなど東アジア、東南アジア地域では縁起物として人気があります。

 

これらの地域では、散茶よりも緊圧茶の方が好まれるため、最も高値のお茶でもあります。

 

緊茶は、きのこ形と板状の2パターンがある

緊茶(きんちゃ)は、プーアル散茶を原料として作られるプーアル緊圧茶の一種で、清代中期以降に、きのこ形が作られるようになり、現在の規定では、重さは250g、原料には3~10級のプーアル散茶が使われます。

きのこ形の緊茶

 

大半はチベットで消費されていますが、雲南省内に暮らす少数民族の中にも飲用している民族が存在します。

 

きのこの形は独特で成形や包装が難しく、重さを変えずに形を長方形に変えたものが、1957年以降流通しています。大きさは15cm×10cm、厚みは2㎝の板状で、「普洱磚茶(ぷーあるたんちゃ)」とも呼ばれますが、きのこ形と同じように「緊茶」とも呼ばれています。

普洱磚茶

 

おめでたい字が刻まれていた方茶

方茶もまた、プーアル散茶で作られる緊圧茶です。現在作られている銘柄は、「普洱方茶」、「中茶」の2つです。形は方の字から連想されるように、10cm×10cmの正方形をした板状で、厚みは2.2cm、重さは250gと規定されています。

方茶

 

形状的に輸送に向いており、北京をはじめ、上海や広州といった都市部で流通しているだけでなく、一部は輸出もされています。かつてはこの正方形の中に、「福」「祿」「寿」「喜」といった幸せや豊かさ、長命など縁起の良い意味を持つ漢字が刻まれていました。

「福」「祿」「寿」「喜」の漢字が刻まれている方茶

 

プーアル茶以外にもたくさんの種類がある中国黒茶

前述の通り、プーアル茶には、茶葉そのままの「散茶」と、茶葉を固めて成形した「緊圧茶」がありますが、プーアル茶以外の中国黒茶は全て緊圧茶です。つまり、中国黒茶においては固形の緊圧茶が一般的で、プーアル散茶は珍しいと言えます。

散茶と緊圧茶

 

しかし、緑茶、ウーロン茶、紅茶などは、中国においても茶葉のままの散茶が一般的です。中国において、黒茶のほとんどが固形の緊圧茶なのは、輸送の容易性と長期保存性という2つの理由によります。

 

21世紀初頭にプーアル茶ブームが起きたため、近年では中国黒茶(特にプーアル茶)は輸出もされ、世界的に広く飲まれるようになっていますが、プーアル茶ブーム前は中国の辺境地に暮らす少数民族が主な消費者で、中国でも都市部にはほとんど流通せず飲まれてもいませんでした。

砂漠に暮らす少数民族(モンゴル族)

 

成形された緊圧茶は、茶葉そのままの散茶に比べ、計量の手間もいらず運びやすく、また、圧縮成形により内部の空気が抜け長期保存がきくようになるため、保存技術が発達していない時代の運搬には適していました。

 

そのため、生産地である都市部から、消費地である辺境地に輸送するために、緊圧茶に加工されているのです。

 

では、前置きが長くなりましたが、プーアル茶以外の中国黒茶(緊圧茶)について見ていきましょう。

 

角丸の長方形に黄色い包装が目印の康磚茶

康磚茶(こうたんちゃ)は、四川省雅安、楽山で作られる緊圧茶で、穀雨の時期(4月20日前後)に摘んだ茶葉で作られます。

康磚茶

 

四つの角を丸くした長方形で、厚さは4.7cmと少し厚めで、重さは約500gあります。1枚ずつ黄色い紙に包まれており、20枚ずつ竹の袋でくるまれ、出荷されます。

 

四川省成都の南門からチベットに通じる「南路」と呼ばれるルートを通って出荷されるため「南路辺茶」と呼ばれます(南路辺茶と呼ばれる中国黒茶のカテゴリーに属します)。

 

消費地は、四川省チベット自治州、チベット自治区、青海省などで、お茶を包む紙が黄色なのは、チベットで縁起の良い色とされているためです。

四川省、チベット自治区、青海省の場所

 

茶に含まれる茎の量は8%以下ととても少なく、可溶性成分も30%以上と、品質の高い黒茶と言えます。

 

康磚茶より少しお手頃?弁当箱型の金尖茶

金尖茶(きんせんちゃ)は、四川省雅安、楽山などで、立夏(5月5日頃)に摘んだ茶葉を使って作られる緊圧茶です。形は完全に四隅を落として丸めた長方形で、弁当箱の形に似ています。

金尖茶

 

品質は康磚茶と比べると少し劣り、茎の含有量は15%程度、可溶性成分も20%程度に落ちます。しかし、厚みは12cmと分厚く、1枚が2.5kgあります。

 

康磚茶と同じく黄色い紙に包まれ、それを4枚ずつにまとめて10kgずつにし、康磚茶と同じく四川省チベット自治州、チベット自治区、青海省などに出荷されます。南路を通って運ばれる南路辺茶の1つです。

四川省、チベット自治区、青海省の場所

 

陝西省から湖南省に産地の変わった茯磚茶

茯磚茶(ぶくたんちゃ)を開発したのは陝西省の人で、その後も陝西省で製造されていたのですが、現在は湖南省で作られている緊圧茶です。夏の一番暑い「三伏」の時期に加工製造するのが最適とされることから、「伏茶」と呼ばれることもあります。

茯磚茶

 

陝西省で作られていた当時から、茶葉は湖南省産のものを使っており、湖南省安化で黒荒茶の段階まで加工されたものを陝西省に運んでいましたが、1951年、この輸送の手間を省こうと、全工程を湖南省安化で行うことになりました。

※黒荒茶:一次加工を終えた茶葉。黒荒茶が仕上げの製茶工程を経て製品となる。

陝西省、湖南省の場所

 

生産拠点は陝西省から湖南省に移った後、産地は更に拡大し、今は益陽、臨湘の他、都江堰、北川、平武でも作られています。

 

形状は長方形で、大きさは35×18.5cm、厚みも5cmと大きめで、重さも1つ2kg前後です。特徴的なのは、製造工程で現れる「発花」という茶葉の中に黄色い点が現れる現象です。

茯磚茶の金花

 

黄色い点が増えていくに従い、茶の中に花が咲いたように見えるため、この点を「金花」と呼ぶのですが、その正体は人間にとって有用なかびの一種で、お茶に芳香を与えてくれるありがたいものです。

 

金花による芳香は「菌花香」と呼ばれ、茯磚茶の主消費者であるウイグル族の人々によく愛されています。出荷先は彼らが暮らす新疆ウイグル自治区や青海省、甘粛省などです。

新疆ウイグル自治区、青海省、甘粛省の場所

 

茶葉の茎含有量が約18%で金花が多く菌花香が豊かな「特制茯磚茶」と、茎含有量約20%で金花が少なめな「普通茯磚茶」の2つのグレードがあります。

特制茯磚茶、普通茯磚茶

 

方包茶は、ほぼ立方体の籠入り黒茶

方包茶(ほうほうちゃ)は、四川省都江堰、北川、平武で作られる緊圧茶です。名前の由来はその形にあります。50cm×68cm×32cmでほぼ立方体に近く、同じ大きさの竹籠に入れて(包まれて)出荷されます。

方包茶

 

重量は35kg前後あり、その6割が茎で占められているのも特色の1つとなっています。

 

四川省成都の西門から青海省に至る「西路」と呼ばれるルートを通って運ばれる「西路辺茶」の1つです(西路辺茶と呼ばれる中国黒茶のカテゴリーに属します)。ほとんどは四川省阿壩チベット族自治州へ、一部は甘粛省、青海省に出荷されています。

四川省、甘粛省、青海省の場所

 

名前が復活した貢尖茶、生尖茶、天尖茶

貢尖茶(こうせんちゃ)、生尖茶(せいせんちゃ)、天尖茶(てんせんちゃ)は、湖南省で作られる緊圧茶で、3つを合わせて三尖茶と呼ばれることもあります。3つとも籠に入れて出荷される籠入り黒茶で、原料となる茶葉は湖南黒毛茶です。

貢尖茶生尖茶
天尖茶

 

お茶の熟成度や茶葉の大きさなどによって名前が分けられており、かつては、芽尖、白毛尖、天尖、貢尖、郷尖、生尖、掴尖の7種がありました。

 

質の良い天尖茶や貢尖茶は、清代には皇帝への献上茶として使われていたこともありましたが、時代が下るに従って種類は減り、7種あったものは天尖、貢尖、生尖の3種となりました。

 

そしてとうとう、1970年代に至ると、名前も湖南省の略称である「湘」の字を頭につけた湘尖1号、2号、3号に変えられてしまいました。最近は元の名前に戻りましたが、湘尖茶という名前は今も使われています。

湘尖1号

 

大きさは58cm×50cm×35cmの籠に入れており、重さは天尖、貢尖、生尖それぞれ50kg、45kg、40kgと違います。主な消費地は陝西省、山西省、甘粛省などです。

陝西省、山西省、甘粛省の場所

 

花巻茶から生まれた花磚茶

花巻茶(はなまきちゃ)、花磚茶(はなたんちゃ)は、湖南省産の緊圧茶で、主な出荷先は山西省、寧夏区、内モンゴル自治区です。最初に作られていたのは花巻茶でした。

山西省、寧夏区、内モンゴル自治区の場所

 

花巻茶は、直径20cm、高さは約150cmの円柱形という独特の形をしており、重さは約36kgもあります。

花巻茶

 

「千両茶」という別名もありますが、これは中国で使われている重さの単位「両」が、清の時代には約37.3gであったため、大体千両の重さであったことからきています。

 

花巻茶(千両茶)が作られるようになった清の同治年間(1862~1874年)以前には、その10分の1の重さである「百両茶」というものがありました。ちなみに現在は、1両が約50gですので、千両茶(千両程度の重さのお茶)ではありませんが、名前としては残っています。

千両茶、百両茶

 

花巻茶は大きく重い上、作るのにも手間と労力を要します。原料は黒毛茶で、それを蒸した後で踏んだり、絞ったりと押し固めて成形するのですが、この作業は力の強い男性を8人も必要とする重労働です。

花巻茶の製造風景

 

そのかいあってか、しっかりと成形され乾かされた花巻茶は、水につけたまま7年経った後も、中心部は乾いたままだったと言われています。

 

しかし、生産の手間や輸送の困難な大きさ、重さという欠点は大きく、1958年に製造が中止されてしまいました。以降、その代替として35cm×18cmの長方形で厚みが3.5cm、重さ2kgというだいぶコンパクトで扱いやすい形の「花磚茶」が製造されるようになりました。

花磚茶

 

しかし、花巻茶の復活を求める人々は多く、2000年辺りから再び作られるようになりました。花巻茶の独特な形状などが注目を集め、製造再開後の人気は高く、現在では湖南省産黒茶の主力製品となっています。

人気を高める花巻茶の販売風景

 

黒磚茶は、花磚茶の廉価版

黒磚茶は、湖南省産の緊圧茶で、花磚茶との違いは、使われる黒毛茶の配合です。黒磚茶には、花磚茶よりも茎が多く含まれた少し等級の低い茶葉が使われます。形は花磚茶と同じ35cm×18cmの長方形で、厚さも3.5cmで変わらず、重さも2kgです。

黒磚茶

 

現在は甘粛省、寧夏区、青海省、新疆ウイグル自治区が主な消費地ですが、1940年代には旧ソ連に輸出されていたこともあります。

甘粛省、寧夏区、青海省、新疆ウイグル自治区の場所

 

工場で大量生産されている青磚茶

青磚茶は、湖北老青茶を原料として作られる湖北省産の緊圧茶ですが、扱っていたのは山西省の茶商人たちで、彼らにより新疆ウイグル自治区やモンゴル、ロシアなどの消費地に運ばれていました。

青磚茶

 

湖北省漢口が1861年に通商都市になり、ロシアの商社がたくさん設立されると、彼らは緊圧茶の輸出にも力を入れました。

 

作られた緊圧茶を輸出するだけでなく、自ら緊圧茶を製造する工場を建設しました。押し固めなどの製造工程には機械を使い、大量生産ができるようになりました。

 

輸出が増えるに従い、工場のあった羊楼洞には原料茶を自ら加工・販売までを行う、緊圧茶の製造販売業者が増えました。彼らは「茶庄」と呼ばれ、山西省の出身者で占められていました。

羊楼洞にある茶庄の工場

 

最も大きな茶庄は「三玉川」で、ここの扱う青磚茶はとても有名でした。青磚茶の銘柄が全て「川」となったのは、この三玉川に由来しています。

茶庄「三玉川」

 

青磚茶には、包装だけではなく茶葉そのものにも「川」の字が刻まれており、「川字茶」と呼ばれることもあります。中国で商標登録制度が始まったのは1981年ですが、その最初の登録商標の中に、この「川」も入っていました。

茶葉に「川」の字が刻まれている青磚茶

 

商品企画は1950年代に統一されて1つになりましたが、かつては4つの規格がありました。

・1枚約2kgのものを1箱27枚詰めた「二七」

・1枚3.25kgのものを1箱24枚詰めた「二四」

・1枚1.5kgのものを1箱36枚詰めた「三六」

・1枚2kgのものを1箱39枚詰めた「三九」

の4つで、規格名は1箱に詰められた枚数に準じています。

 

4つの規格のうち、二四と三六は内モンゴル自治区やロシア、モンゴル、二七と三九は内モンゴル自治区と寧夏区に出荷され、前者は「東口茶」、後者は「西口茶」と呼ばれていました。

 

規格統一により、現在生産されているのは二七のみで、主消費地であるモンゴルの言葉が印刷された包装紙に包まれ、年間約5000tが生産されています。

 

芳醇な香りが特徴の六堡茶

六堡茶(ろっぽちゃ)は、清王朝嘉慶年間(1796~1820年)から銘茶と謳われてきた歴史ある緊圧茶です。産地はその名の通り広西区の蒼梧県六堡郷で、この地の大葉種の茶葉で作られています。

六堡茶

 

直径53cm、高さ57cmとややずんぐりとした樽形で、重さはかなり重く40~55kgもあり、成型後、籠に入れて出荷される籠入り緊圧茶です。

 

形も独特ですが、味や香りも独特のものがあります。発酵中の茶葉に出るかびの胞子を「金花」と呼びますが、これがお茶に豊かな風味をもたらします。

六堡茶の金花

 

ビンロウに似た芳醇な香りを最大の特徴とする六堡茶は、その風味も愛され、とても人気があり、年間生産量は2000~2500tにも上ります。

ビンロウ

 

ほとんどが広西区や広東省、マカオで消費されますが、輸出もされており、シンガポール、マレーシア、オーストラリアの他、日本にも入ってきています。

 

長期間の貯蔵・熟成を経たヴィンテージ六堡茶を、整腸薬(下痢止め等)や解毒薬として古くから利用している地域もあります。